デンマークのオーフス大学に在籍する竹内氏は、長期記憶を保持する仕組みを研究する脳科学者です。
様々な国で研究成果を発表する科学者にとって、デザインはどのような貢献が可能か?
私にとってそのプロセスは、まさに長期記憶にしっかりと刻み込まれました。
CHAPTER 1
どのようにして個性を示せるか?
脳科学者のロゴというと、どのようなモチーフが考えられるでしょうか?脳のシルエット、ニューロンなどお決まりのモチーフがあり、実際にそのようなロゴが世界中にあります。
しかし、そのロゴが表示される場所へ訪れる人は、ほとんど脳科学に関係する人ばかりではないのでしょうか?そこで、自明のことである脳以外のモチーフを採用することで、他の脳科学者と差別化ができるのではないかと考えました。
イニシャルをぼんやり見ていると…
竹内氏のイニシャルを見ているとT.Tとなることに気がつきました。この2つのTを利用することで「竹」という漢字を作れることに気がつきました。もちろんアジア圏の人しか理解できないアイデアかもしれません。モーションをつけて提示することで、そのアイデアをわかりやすく伝えられると考えました。
CHAPTER 2
研究しているのではなく、追求している。
日々の出来事は、長期記憶として脳に刻み込まれるものもあれば、すぐに忘れ去られるものもあります。そして、長期記憶として脳内に保存された知識や経験が、その人の物事を認識する枠組みとなり、人格や考え方を形成します。 つまり、長期記憶の謎を研究することはアイデンティティの謎を追求することと言えます。そんな会話を竹内氏と重ねていくうちに、タグラインが生まれました。
CHAPTER 3
実は「ロゴを作る」ことが今回の仕事ではない。
当初はロゴデザイン開発の依頼でしたが、ロゴデザインを作る意味をよくよく考えると、竹内氏やその研究成果が少しでも魅力的に見えるようにすることが本質であると考えました。そのためにはロゴを作るだけでは不十分だと思います。 そこで、「研究者にとって一番重要な接点である研究成果の発表が、少しでも印象深くなるためにデザインをする」と自分の仕事を定義し直しました。
様々なメッセージに変化するロゴ
提案したロゴは様々なメッセージに変わります。特に「Thank you」はプレゼンテーションの最後に使われる言葉であり、その言葉がロゴと関連して提示されることにより、聞き手に強い印象を残せるのではないか、と考えました。また、ロゴが生まれる過程のモーションを制作し、プレゼンテーションの冒頭で自己紹介もかねて使用していただくことにしました。