「おかえりQR」は、株式会社 昭文社が展開する迷子の早期発見支援サービス。
高齢化が進む日本における新たなインフラストラクチャーの構築を目指して、2018年のサービス開始から、包括的なサポートを継続しています。
CHAPTER 1
始まりは、ロゴとネーミング開発。
当初、「お家に帰ろうプロジェクト(仮名)」と題されたこのサービスは、誰かが迷子になった時に、持ち物のシールに貼られたQRを発見者が読み取ることで、簡単にそのご家族へ連絡することができるもの。
新規事業として立ち上げるにあたり、ネーミングとロゴデザインが必要、とのご依頼から始まりました。
「この案件の本質はロゴのデザインなのだろうか?」
高齢者が持つ杖などにも貼れるようにするため、シールのサイズは横3.5cm×縦2.5cmほどの大きさにする必要がありました。そして、QRコードがきちんと読み取れるようなサイズでレイアウトすると、シール上で伝えられる情報は限られます。
その制約の中で、ロゴが機能しなくてはなりません。さらに、迷子を発見した方の心情を想像すると、シールを見つけたら次に何をするべきかわかりやすい必要があります。 そのように発見した時の状況を想像していると、ロゴデザインというよりもわかりやすい「アイコン」が必要であると考えました。そして、ネーミングも直接的な表現の方が良い、との結論に達しました。つまり、今回の案件はロゴとネーミング開発というよりも、QRシールのデザインが本質であると確信するに至りました。QRシールとして機能するように、逆算してロゴとネーミングを考えることにしました。
「おかえりなさい」という優しい響き。
もっともわかりやすい言葉をシールに入れるのであれば、「迷子です。QRを読み取ってください!」といった言葉にすべきでしょう。でも、このシールを貼っている方が常に迷子であるとは限りませんし、なんとなく差別しているような気がしたので、「迷子です」と断定するような言葉は避けました。「区別」が「差別」に繋がってはいけないのです。
色々と検討していると、「おかえりなさい」という言葉が浮かんできました。本来いるべき場所へ戻ってきた時にかける言葉。そして、それは「場所」というよりも家族や友人、会社といった「人間同士の温かい関係性」へ戻ってきた時にかける言葉。この言葉こそがネーミングに最適であると思いました。
シンボルマーク、というよりアイコンは、誰が見ても「家」とわかるようなデザインにし、QRシールにレイアウトしました。どのような色の貼り付け先でも目立つように、切り返しを使用して明度差をつけたデザインとしました。
CHAPTER 2
関東圏を皮切りに、プロモーションを展開。
サービス立ち上げから1年半ほどで、関東圏の郵便局(4700局以上)で販売できるまでプロジェクトが進み、並行して都営地下鉄での広告やウェブ広告、B2B施策、グッズ制作など、あらゆる側面で二人三脚で進めてまいりました。
意識を統一するために。
「おかえりQRとは何者か? そして何をどのように人に説明するべきか?」
サービス紹介の基本的なストーリーラインを整理しつつ、おかえりQRのパーソナリティなどの情報を1ページにまとめた、ブランドブリーフと呼ばれる資料を作成し共有しました。 ブランドは生き物です。今後の展開に応じて、核となる部分以外を微調整しつつ、意識の統一を図っていきたいと考えております。
CHAPTER 3
私たちには、記憶力を治癒する力はありません。でも、インフラを作る力はあるはず。
おかえりQR普及に向けて、やるべきことが2つあります。それは「使っていただくこと」と「知っていただくこと」。
もちろん各々伝えるべきメッセージや施策は変わります。常にその2つの方向性を意識しつつ、様々な施策を展開してまいります。